我が家の3歳の娘は自閉症です。
昨年の年初からABA療育を始めて、1年と3か月ほど経ちました。
ABA療育で、娘に沢山の事を教えましたが、その中で思い入れがあるものを紹介します。
なお我が家が行っているのは、机とイスを使って、課題を繰り返すDTT(ロバース博士考案)です。
1.イスに座る
イスは小さい子が使うプープー鳴るイスです。(改造して音が鳴らないようにしてあります。)
それとこのイスに合うサイズの小さめの机を用意します。
自閉症児をイスに座らせます。
「なんて簡単な課題なんだ!」と思ったら、大間違いです。
相手は言葉を理解できていない自閉症児(当時、2歳3か月)
言う事を全く聞いてくれません。
なんとか座らせたら、自閉症児必殺の癇癪爆発。
30分以上絶叫してました。
この問題行動(癇癪)への対処方法は無視して、癇癪が収まるまで待つです。
問題行動(癇癪)を起しても無駄だと気づかせる事で、その行動を減らします。(これをABA用語で消去と言います)
こっちの気が狂いそうでしたが、ひたすら我慢して待ち続ける事、30分超。
本当に癇癪が収まりました。
初めてABAで娘をコントロールできた瞬間ですね。
その時点でまだ半信半疑だったABA療育を信じるようになりました。
2.積み木をお椀に入れる
イスに座るようになったら、積み木をお椀に入れる練習です。
「なんて簡単な課題なんだ!」と思うでしょうが、我が家の自閉症児にはそんな事もできませんでした。
最初は積み木を持たせて、その下にお椀を持っていき、積み木を持っている手を広げて、お椀に落とします。
「入ったぁーーー。上手ーーーー」と大げさに褒め、お菓子を食べさせます。
(ABAではこの場合の、お菓子を強化子といいます)
ABAでは増やしたい行動を、補助(ABA用語でプロンプト)付きで行い、ご褒美(強化子)を与える事で増やします。(ABA用語で強化)
そしてだんだん補助を減らしていき、全く補助無しでもできるようにします。(ABA用語でプロンプトフェーディング)
我が家の娘は1週間ほどでマスターしました。
今まで全くいう事を聞かなかった娘が、親の指示通りに動いているという感動もありつつ、「うーん、これって直接実生活に役に立たないなぁ」とも思いました。
でも、本の序盤の課題ですし、しょーがないですね。
3.動作模倣
動作模倣とは人の動作を真似する事です。
「なんて簡単な課題なんだ!」と思うかもしれません。
しかし相手は、親にすら興味を示さない自閉症児。
人の真似なんてした事はありません。
娘に向かって、片手を挙げるポーズをして、「こうしてー」と言います。
当然、娘は真似する訳が無いので、親がもう片方の手を使って、娘の手を挙げさせます。(プロンプト)
段々プロンプトを弱めて、娘の意思だけで片手を挙げるポーズを真似できたら、完成です。
応用して、バンザイ、バイバイ、グルグル回ると、色々とバリエーションを増やします。
ちなみにバイバイは自閉症児によくあると言われる逆さバイバイでした。
(本人の方に手のひらを向けてバイバイする)
自閉症児は相手の立場に立つのが苦手なので、「相手に手のひらを見せる」という事が分からないんでしょうねぇ。
段々マシにはなってきましたが、現在でもたまに逆さバイバイします。
ちなみに動作模倣は相手に注目しないとできないので、他人をしっかり観察する良い訓練になります。
4.受容命名
全く聞きなれない言葉だと思います。
物の名前を覚えさせる課題です。
健常児は親や周りの大人が喋っている言葉と状況から物の名前を勝手に覚えていきます。
しかし周りに関心を持てない自閉症児は物の名前を覚えません。
受容命名では、絵カードやぬいぐるみ・人形を目の前に置き、物の名前を言ったら、その物にタッチする事を教えます。
このあたりの課題までは独学でやってました。(ABAを始めて1か月くらい)
つみきの会の発達相談に行き、現状できる課題を見せる為に、10人くらいの人(セラピストさん)に囲まれた状態でやったのを覚えています。
空気が違うのを感じたのか、普段は出来ていたのに、ミス連発。
なのにつみきの会代表の藤坂さんが動物フィギュア(ゾウ、キリン、ライオン)でやったら、正解連発。
終わった後、速攻でおもちゃ屋に行って、動物フィギュアを買って、我が家のABAに取り入れたのは言うまでもありません。
動物フィギュアでこの課題をマスターし、その後は絵カードを使って、少しずつ色々なものを教えました。
現在では数百〜千くらいのものを教えたでしょうか。
5.音声模倣
音声模倣とは親が言った言葉を真似する課題です。
健常児だったら簡単な課題ですよねー。
でも、娘は当時、2歳3か月にして、少し喃語が出る程度。
まずは親が「あー」と言ったら、娘に「あー」と言わせる。
当時はABAを始めて1か月。まだ独学でやってました。
動作模倣で相手に注目することを覚えた後だからか、「あー」を始め3つくらいは言えるようになりました。
でも他の音が真似できません。
この課題もつみきの会の発達相談で、見てもらったんですが、代表の藤坂さんがやったら、その1時間だけで、いっきに5つ以上、真似できる音が増えました。
やっぱり教える人の腕って大事なんだなと痛感しました。
しかし音声模倣はABA初級課題の最難関で、これで挫折する人が多いようです。
昨年の4月からはつみきの会セラピストさんに来てもらって、ABAセラピーしてもらっているんですが、音声模倣の大半はセラピストさんが言えるようにしました。
私たち両親がやったのは、言えるようになった音声を定着すべく毎日、練習する事ですね。
結局、50音全てが言えるようになったのは、音声模倣を始めて、10か月後。その間、毎日練習してやっとですよ。
50音がある程度言えるようになったら、1〜2音の単語(木、歯、青、赤、桃)を言わせる。
これも結構苦労しました。
とりあえず娘の得意な50音で、何か単語が無いかを探して、言わせる。
でも、50音の半分しか言えない状況で、1〜2音の名詞って結構ないんですよね。
そんな娘ですが、現在では2語文喋ってます。たまに3語文も出ます。
まとめ
とりとめなく、思い入れのあるABA課題を書きました。
この状況を振り返って、我が家の娘が現在ある程度、言葉を認識し、喋れるのは、完全にABA療育のお陰ですね。
とても自然に喋れるようになったというものではありません。
もし無発語の自閉症のお子さんをお持ちの方がいらっしゃったら、是非ABA療育にトライして欲しいです。
もちろんABA療育も万能ではありません.
とてつもない労力、忍耐力、分析力が必要です。
ABA自体もきちんと理解しないと出来ません。
子供との相性もあるでしょう。
重度の自閉症児や、何にも関心を持たない自閉症児(強化子を用意できない)には難しいかもしれません。
それでも医学で治せない自閉症児が
言葉を獲得できる可能性があるとしたら
親にすら無関心だったのが「かまってちゃん」になるとしたら(現在、娘は「かまってちゃん」です)
やらないともったいないです!